厚生常任委員会 県北地区調査
参加議員
委員長: 山内佳菜子
副委員長:山内いっとく
委員: 山下博三 斎藤了介 野崎幸士 (井本英雄) (坂口博美)
調査概要
7月30日(火)
1 石川県立中央病院
8月1日(水)
2 オープンダイアローグ石川
3 石川県医療在宅ケア事業団
4 石川県庁少子化対策監室子育て支援課
8月2日(木)
5 富山県リハビリテーション病院・こども支援センター
〇課題・感想
能登半島の震災があり、各地で震災の影響を伺うことができた。災害医療という視点からも、地域医療を支えていく仕組みづくりが大切であると改めて感じた。
① 石川県立中央病院 石川県災害拠点病院の取組及び経営状況
1 診療活動の重点
県内医療機関で対応困難な高度医療、特殊不採算医療を担当し、特に重点医療として、周術期・集中医療センター、総合母子医療センター(5を参照)、がん医療センター、救命救急センター及び血管病センターを設置し、専門スタッフによるチーム診療体制の強化を図っている。
2 総合母子医療センター~石川県立病院の取組(一部紹介)~
総合母子医療センターは、妊娠、出産から新生児および思春期での小児に対し、安心して産み育てることができる場を提供するため、高度な医療を 24 時間体制で行う施設で、女性と子どもに対する総合的なチーム医療を行っており、母体・胎児・新生児から乳幼児期、学童・思春期へと一貫した治療を行うため、同じフロアにこれらの病棟を配置している。これにより、産科医師と小児科医師の連携が図られやすくなり、医師は出産前から胎児の状況を把握しやすくなる。
3 基幹災害拠点病院について
災害拠点病院とは、地震、津波、台風など災害発生時に災害医療を行う医療機関を支援する病院であり、中でも基幹災害拠点病院は各都道府県に原則1か所以上整備。阪神・淡路大震災を契機に、患者の広域搬送や応急用資器材の貸出し、医療救護チームの派遣等に対応できる「災害医療支援拠点病院」の設置が提言され、各都道府県内や近県において災害が発生し、通常の医療体制では被災者に対する適切な医療を確保することが困難な状況となった場合に、都道府県知事の要請により傷病者の受け入れや医療救護班の派遣等を行うこととなったものである。
※ 石川県では、石川県立中央病院が県内唯一の基幹災害拠点病院であり、宮崎県では県立宮崎病院、宮崎大学医学部附属病院が該当する。
②オープンダイアローグ石川 ひきこもり対策に資するオープンダイアローグの取組
1 オープンダイアローグ(OD)とは
・フィンランド発祥の精神疾患に対する治療・ケア技法・アプローチで、広くはシステム・対話の在り方・思想を指す。
・統合失調症の治療に対し可能な限り投薬を行わない方針で効果を上げているとの研究結果が発表されている。
・ダイアローグとは「会話」ではなく「対話」であり、お互いのことを「知らない」ことを前提として、相手との違いを認め合いながら、相手の話に耳を傾け、対等な立場で話を重ねることである。
・OD は、基本的に患者本人と家族や精神科医、看護師、ソーシャルワーカー、心理士などの社会的ネットワークでチーム対応するアプローチで、①ミーティングと②リフレクティングという2つのプロセスで構成される。しかし①と②だけあれば OD ということではない。
① ミーティングとは、クライアント(多くは患者)から相談を受けたスタッフが中心となって、社会的ネットワークのメンバーを招集しクライアントを含めたミーティングを行う。その際、すべての参加者には、平等に発言の機会と権利が与えられる。また、クライアント本人抜きでは、いかなる決定もなされない。
② リフレクティングとは、クライアントの目の前で、専門家たちがミーティングの結果について話し合うことである。クライアントは、専門家たちの話し合いの様子を観察することになる。このリフレクティングにより、クライアントおよびメンバーは、俯瞰的に自分自身の状況を理解し、治療チームそれぞれのメンバーの視点を知ることにより、既存の方法では得られない気づきを生むと言われている。
①と②を織り交ぜながら対話を継続することで、様々な精神疾患や精神的不調、人間関係の悩み、困り事などの社会的課題に対する効果や副産物的に解決方法が生まれることが期待される。
2 オープンダイアローグ石川・オープンダイアローグ金沢
オープンダイアローグ石川(Open Dialogue Ishikawa:ODI)は、ODを石川県や北陸にもっと広めたいと2023年8月に活動を開始。 ODIでは OD の体験会や実践による対話の場を主催・提供している。オープンダイアローグ金沢(Open Dialogue IshikawaKanazawa:ODIK)では、OD そのものを学びたい、ファシリテーターとして練習を積みたい方などに、教育学習・訓練の機会を提供するなどを活動目的としている。
③石川県医療在宅ケア事業団
石川県、県医師会、県看護協会が一体となって取組む訪問看護
1 事業団の概要
高齢社会が急速に進展するなかで、“病気になった後もできる限り住み慣れた地域や家庭で安心して療養生活を送りたい”こうしたニーズに応え、平成6年12月、石川県における在宅ケアの推進母体として、石川県、石川県医師会、石川県看護協会で構成する社団法人「石川県医療在宅ケア事業団」が設立された。以来、市町や関係団体等と連携を図りつつ、各地域の特性や需要を踏まえ、訪問看護ステーションを設置し在宅ケアの充実に努めている。
2 事業内容
要介護高齢者等に対する訪問看護サービスが不足している地域等において、地元市町はじめ行政や医療関係機関等と一体になって訪問看護サービス等を提供。
3 特色
・訪問看護は、在宅医療を支える重要な役割を担っているが、過疎地域等では採算がとれないこと等から民間が参入しにくい。
・そこで県、県医師会、県看護協会が一体となって事業団を結成し、訪問看護サービスが不足している地域等へのサービスを提供し、高齢者の福祉の増進に貢献している。
・認定看護師(1 名)及び特定行為研修修了看護師(4名)が在籍
④石川県庁少子化対策監室子育て支援課 全国に先駆けたマイ保育園の取組
1 概要
平成 17 年 10 月より、保育所等を身近な子育て支援の拠点として位置づけ、「マイ保育園登録制度」を創設。妊娠時から特に3才未満児の全ての子育て家庭を対象に、登録した自宅近くの「マイ保育園」(認定こども園、保育所、幼稚園)において、育児体験の実施、気軽に利用が可能な育児相談や育児教室、一時預かりの実施、子育てコーディネーターによる子育て支援プランの作成、継続的・計画的な支援などを実施し、妊娠中から出産後の育児不安解消を図っている。また、3歳未満の児童は、「マイ保育園利用券」を使って半日預かりを無料で 3 回受けることができる。
2 効果
・在宅で子育てする家庭も保育所等に気軽に相談に行くことが出来るようになり、出産前の育児不安の軽減、身近に相談相手がいる安心感につながっている。
・子育て支援プランの作成過程で、一見問題なさそうにみえる親子の問題を発見することができるなど、ケアの必要な家庭の把握に寄与している。
⑤富山県リハビリテーション病院・こども支援センター
高次脳機能障がい児に対する支援
1 富山県リハビリテーション病院・こども支援センターについて
専門外来として、義肢・装具、パーキンソン病、非侵襲的脳刺激治療、嚥下、糖尿病、甲状腺、腎臓・高血圧、手・足の外科、リウマチ、子どもの心(児童精神)、てんかん、高次脳機能、ボツリヌスの 13 科が設置されている。
2 高次脳機能障がい外来について
このうち、高次脳機能障がい外来では、小児から成人まで高次脳機能障がいの診断と支援を提供しており、頭部外傷や脳血管障がい(脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血)、脳炎等によって高次脳機能障がいをきたした患者の診断と支援を行っている。
外来では、病歴聴取と診察を行った後、神経心理学的検査、放射線学的検査、神経生理学的検査などの検査を行って、治療方針を決定。
高次脳機能障がいは、注意、記憶、視空間認知、遂行機能などに障害をきたし、目にえない障害のため、周りの人に気づかれにくく、誤解を受けることも多いため、家庭や学校・社会生活に支障をきたすことも少なくない。そこで、原因や病態によっては、小児科、脳神経内科、脳神経外科、神経精神科、リハビリテーション科などの他科と協力。主な支援として、外来リハビリテーションによる認知訓練を行うだけでなく、高次脳機能障がいの患者が安心した社会生活が送られるように、富山県高次脳機能障害支援センターと緊密に連携して、精神手帳・障害年金等の作成、就学・就労等の社会的支援を行っている。
3 富山県高次脳機能障害支援センターについて
院内に、富山県の支援拠点機関として平成 19 年 1 月に高次脳機能障害支援センターを開設。
このセンターでは、医師(リハビリテーション科、脳神経外科、小児科)、公認心理師、ソーシャルワーカ、作業療法士、言語聴覚士、福祉施設職員などの多職種によるチームで、高次脳機能障害者(児)の支援に取り組んでいる。